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Rti 台湾国際放送Rti 台湾国際放送ようこそT-roomへ - 2021-06-30_台湾の交通事情

  • 30 June, 2021

 私は、台湾にやってきて今年で16年目になりますが、中華民国台湾は、非常に住みやすいと感じています。台湾の良さをあげますと、親切な人が多いこと、美味しい食べ物がたくさんあること、自然が豊かであること、そして治安の良さでしょうか。

 トルコ出身で、テレビの旅番組の司会者として活躍する中国語名、ウー・チョンフォンさんは、自身のyoutubeのコンテンツの中で、欧米諸国十カ国の出身者に「台湾は安全な場所だと思いますか」と問いかけました。すると、スペイン人、アメリカ人、ベルギー人、フランス人など、各国の人々が、中華民国台湾はこれまで住んだことがある国の中で最も安全な国だと指摘、日中の町中はもちろん、深夜に酔っぱらっていても、トラブルに巻き込まれることはないと述べ、財布を落としても手元にかえってくると賞賛しました。

 夜間一人で歩いても心配する必要がなく、殺人事件など凶悪犯罪に巻き込まれる可能性も非常に低い台湾、公共の安全において、「治安」に関しては素晴らしい状況といえます。ただ、それと共に重要といえる、路上の安全面については大きな課題があるんです。

 車線を跨いでの追い越し、けたたましく鳴らされるクラクション、そしてノロノロ運転の車がいたかと思うと猛スピードの危険走行、こうしたヒヤヒヤさせる光景は、台湾の至る所で目にします。台湾で何年暮らしても慣れない点、そして、改善すべきだと考じる点は交通マナー、と考えている台湾在住の日本人は少なくないと思います。

 台湾には、「台湾には台湾独自の運転ルールがある」という人もいます。ただ、それで事故も少なければいいのですが、実際に事故は多く、交通安全への意識の低さは多くの悲劇を生んでいます。

 19歳のティンイーさんは、2人の子供を生み、今年の1月、正式にご主人のニエンチューさんと籍をいれました。本来であれば、幸せなハネムーンの時期のはずですが、何と、交通事故により夫と上の子を失い、自らも体に障害が残りそうな重症を負いました。さらに悲劇は続きます。事故から一ヶ月もたたず、今度はおじさんが、ティンイーさんの妹と下の息子を連れ、車で病院に見舞いにいった帰り、ハイウェイで後ろからコンクリートミキサー車に追突され、乗っていた車が炎上、妹と息子は即死し、大怪我を負ったおじさんも翌日に亡くなったのです。ティンイーさんは、2つの交通事故により夫、二人の息子、そして妹とおじさんを失ってしまったのです。

 ただ、こうした痛ましい事故は、台湾の各地で発生しています。交通部の資料によりますと、2020年の一年間、およそ3000人が交通事故により命を落としています。この数は直近5年で最多でした。台湾では2008年、年間の交通事故死亡者数がおよそ3500人に達し、そこからは多少の上下はありながらも、2017年まで減少を続けていましたが、この数年、再び増加を続けているんです。これは事故発生から30日以内の死亡者数です。

 日本の2020年の交通事故死者数は、2019年に比べ505人減の3415人でした。中華民国台湾の人口はおよそ2350万人、日本の人口はおよそ1億2620万人と5.4倍でありながら、両国の交通事故死者数は変わりません。単純計算しますと、台湾の死者数は日本のおよそ5倍となっているわけです。どれほど深刻か、おわかりいただけることと思います。

 また、けが人に至っては2008年は20万人ほどだったものが、増加の一途をたどっており、2020年は年間48万人を超え、50万人に迫ろうとしています。

 つまり、台湾の道路では、平均して一日8人以上の人が亡くなり、1000人以上の人が怪我をしていることになります。この数はいずれも、1999年に大きな被害を出した台湾中部大震災の死傷者数を上回ります。

 かつて台北市政府警察局交通警察大隊を努めた呂碧宗氏は、4月に発生し、49人が亡くなった台湾の在来線、台湾鉄道のタロコ号の事故を受け、交通部の林佳龍・前部長は辞任したが、路上における交通事故死者数は増加の一途をたどっているにも関わらず、原因についての検討がなされておらず、誰も責任を取っていないと批判します。

 実際には、蘇貞昌・行政院長の指示により、交通安全改革会議が行われており、今年に入ってから教育部、内政部、交通部などの各部会にまたがる会議が3度開催されています。しかし、今年の第1四半期、1月から3月の3ヶ月で777名の人が交通事故で命を落としており、2020年を上回る恐れが出ているのです。

 交通安全協会の陳宏益・理事長は、交通事故の発生は、第一に前方不注意、第二に安全な車間距離をとっていないことが原因だと指摘してします。さらに、利便性、スピードを求めるあまり、安全運転の意識が十分でない人も多いようです。

 もう一点、台湾で交通事故が多い大きな要因の一つが、スクーターの多さです。台湾のスクーターは1400万台、その密度は世界一と言われており、2020年の死亡事故のうち、実に6割がスクーターなどの2輪絡み、交通事故に至っては78%と8割近くを占めます。

 かつて国立交通大学の管理学院で学部長をつとめた張新立氏は、台湾の人々の3分の1が中学時代からスクーターに乗り始めており、正確な指導を受けず、交通マナー、法規に関する意識、安全のリスクに対する概念をもたないまま道に出ているとして、まずスクーターの免許をとり、その後、自動車の免許を取得した人は、直接自動車の免許を取得した人よりも、交通マナーが悪い傾向があると指摘しました。

 さらに、台湾では近年、フードデリバリーサービスが流行しており、現在約20万台が稼働していますが、こうした業者ではシステムにはデリバリー時間の遅れを警告するしくみがあり、こうした中、配送スタッフはどうしても急いで運転するようになり、事故のリスクを高めているという問題があるそうです。

 こうした課題をいかにして解決するべきでしょうか、張新立氏は隣国韓国の例を出しました。10年前、韓国の交通事故の死亡率は台湾と同レベルでしたが、韓国では交通安全教育を開始、小学生から高校生まで義務付けとしたほか、2011年には児童向けのアニメも作成しました。こうして啓蒙を続けた結果、2019年交通事故の死亡率は、台湾のおよそ半分、十万人中6.5人まで下がったといいます。さらに、免許取得については、日本を参考に、学科授業、交通マナーの学習徹底を図るべきだ、という指摘もされています。

 スクーターの多さなど、環境的な部分はやむを得ない点はあると思いますが、無謀な運転により、かげがえのない命が失われる悲劇が少しでも減るよう、国をあげて、交通安全への意識向上を徹底させてもらいたいですね。

 

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